GA4に待望の「計算指標(Calculated Metrics)」が追加されました。実際に使ってみた印象と注意点を記します。
UA(ユニバーサルアナリティクス)時代から存在した“指標の計算”機能が、ついにGA4でも利用可能に。ただし、実際に使ってみると「思ったよりも制限が多い…」という印象を受けた方も多いのではないでしょうか。
この記事では、GA4の計算指標を実際に触ってみたうえでの使いづらさの理由と、それでも注目すべきポイントを整理します。
計算指標とは?
GA4の管理画面から
[管理] → [カスタム定義] → [計算指標]
に進むと作成できる、新しいカスタム定義の一種です。
既存の指標を数式で組み合わせることで、オリジナルの分析指標を作ることができます。
作成時には次の項目を入力します:
- 名前
- API名(英数字とアンダースコアのみ)
- 数式
API名は、Looker StudioやAPI連携など外部ツールから呼び出す際に必要な識別子です。
つまり、将来的な外部レポート活用を見越した設計といえます。

計算指標を選択し「計算指標を作成」ボタンをクリックすると入力項目が表示される。

使ってみて感じた「正直、使いにくい」ポイント
1. 使える指標が限定されている
計算式で使用できるのは、GA4で事前に定義されている指標のみ。
自分で作成した「カスタム指標」や「イベントパラメータ由来の指標」は利用できません。
つまり、GA4の標準指標以外は数式に組み込めないということです。
この制限により、独自KPIやイベントごとの効率指標をGA4内で完結して算出するのは難しい状況です。
このリストにある項目を 演算子 を使い計算させた結果を確認できる。
*設定された指標を自由に組み合わせて計算することができない。
例:セッションを選択した場合、ユーザー関連指標しか選べない。
2. 計算パターンに制約がある
使える演算子は、+, -, *, /, ()
といった基本的なものに限られています。
さらに、
*100や/100のように「定数」を式に直接書くことができません。
たとえば「コンバージョン率 = コンバージョン / セッション × 100」
といった式が書けないのは正直不便です。
補足:内部的には“%表示”される指標もある
GA4では、一部の比率系指標(例:エンゲージメント率、直帰率など)は、
内部的には「0.65(=65%)」のように小数値で計算されています。
そのため、ユーザーが *100 を書く必要はなく、
UI上で自動的に“×100して%表記”される仕組みになっています。
| 指標名 | 内部計算値 | UI上の表示 | 備考 |
|---|---|---|---|
| エンゲージメント率 | 0.67 | 67% | engaged_sessions / sessions |
| 直帰率 | 0.42 | 42% | 1 - engaged_sessions / sessions |
| コンバージョン率 | 0.05 | 5% | conversions / sessions |
つまり、GA4の計算指標では「内部で小数値を扱い、UI上で%に変換して表示している」ため、
数式中での *100 は不要かつ禁止されています。
3. カスタム指標が参照できない
GA4で別途定義した**カスタム指標(例:フォーム送信数やクリック率)**は、
計算指標の数式には反映されません。
BigQueryやLooker Studioを使えば同様の計算は可能ですが、
GA4単体では「既定指標を組み合わせる軽微な用途」に限定されます。
気になるポイント:Search Console指標も使える?
計算指標の一覧を眺めると、
Search Console連携指標のような項目も含まれています。
- Google のオーガニック検索の平均掲載順位
- Google のオーガニック検索のクリック数
- Google のオーガニック検索のクリック率
- Google のオーガニック検索の表示回数
これを見ると「これらも計算に使えるのでは?」と思ってしまいますが、
現時点(2025年)では表示専用です。
つまり、Search Consoleとの連携が有効であっても、
これらの値を数式に組み込むことはできません。
GA4で計算指標に利用できる主な既定指標は以下の通りです。
- ユーザー数 / 新規ユーザー数
- セッション数 / エンゲージのあったセッション数
- イベント数 / イベント値
- コンバージョン数 / コンバージョン率
- 広告のクリック数・費用・ROAS
- 購入による収益 / 平均購入収益
- ページビュー数 / セッションあたりのページ数
- DAU/WAU・DAU/MAU
実務での活用はまだ限定的
現状のGA4計算指標は、
「標準指標同士を軽く組み合わせたい」
といったライトな用途には便利ですが、
柔軟なKPI設計にはまだ不向きです。
複雑な計算をしたい場合は、次のようなアプローチが現実的です。
| やりたいこと | 推奨手段 |
|---|---|
| カスタム指標同士の計算 | Looker Studioの「計算フィールド」 |
| 定数や条件式を含む複雑な式 | BigQueryでSQL計算 |
| 特定イベント単位の比率分析 | BigQueryまたはAPI集計 |
まとめ:今後のアップデートに期待
GA4の計算指標は、指標同士を掛け合わせてUI上で可視化できるという点で大きな進歩です。
ただし、現時点では「既定指標の簡易演算ツール」に留まっています。
今後、
- カスタム指標への対応
- 定数や条件式の利用
- 複雑なロジックの実装
といった拡張が期待されます。
それまでは、
GA4(計算指標)+Looker Studio+BigQuery
の3段構えでKPI設計を行うのが実務的です。
以上です。

